債権額分の金銭を供託して申請

休眠担保権抹消特例申請その2 債権額分の金銭を供託して申請

債権額分の金銭を供託して抹消登記を申請するためには、以下の条件が必要になります。

完済_条件1


 担保権者(抵当権者等)が個人の場合には、配達証明付郵便を送付して「不到達」であることが「行方不明」にあたります。したがって、登記記録上の住所から、戸籍謄本、住民票の写しを調査し、そこから判明する住所地には、郵便を送付する事になります。時に、抵当権者やその相続人が行方不明である方が手続きとして容易で、逆に発見される方が手続きとして大変になってしまうケースがあります。そんな場合は「行方不明である」として手続きを進めていくわけには参りません。融通が利かないところではありますが、法律を扱う専門家として、逆に抵当権者の権利を奪ってしまうことになるからです。

法人の場合には、まず登記所で法人の登記事項証明書がないか調査します。ここで登記事項証明書や閉鎖事項証明書が取得できると、それは「行方不明」には該当しません。登記事項証明書や閉鎖事項証明書などの登記記録が見当たらない場合に初めて「行方不明」として認められますが、そのようなケースは稀なため、法人の場合には、この手続きを採る事は難しいと言えるでしょう。

供託_条件2
 icon-arrow-circle-right 登記簿の債権の弁済期の記載がある場合
 昭和39年改正前の担保権の登記には、弁済期が登記事項になっておりました。この場合には古い登記簿謄本を取り寄せ、登記されている弁済期から20年経過している必要あります。

  登記簿に債権の弁済期の記載がない場合
 昭和39年改正前の担保権で、古い登記簿謄本を取り寄せても弁済期が登記されていない場合があります。その場合には、債権の成立日が被担保債権の弁済期となります。さらに、債権の成立日が無い場合には、担保権の設定日が被担保債権の弁済期となります(昭和63・7・1民三3499)。

  根抵当権の場合 
 元本確定日を「被担保債権の弁済期」とみなされます。元本確定の日は、元本の確定の登記があるとき、又は、登記記録上元本が確定したことが明らかであるときはその記録により、それ以外の場合には、当該担保権設定の日から3年を経過した日が元本確定した日とみなされます。

供託_条件3
  ここでいう「被担保債権、その利息及び債務不履行により損害の全額に相当する金銭」とは、供託する時点において現存するものではなく、登記記録から推察することができるそれらの最高額ということを意味します。
 この供託金の計算はかなり複雑ですので、管轄の登記所に行って相談するか、法務省HPにある遅延損害金計算ソフトウェアをダウンロードして計算する必要があります。

この方法のメリット

 完済した資料や契約書がなくても抹消の申請をすることができ、また、裁判手続きを経る必要はないため、比較的短い期間で解決することができます。また、明治時代や大正時代の担保権(抵当権、根抵当権等)は、現在の物価と当時の物価でかなり異なるため、債権額が「10円」等とかなり少額になっているため、そのような場合には、供託する金額もかなり低額で済みます。

この方法のデメリット

 例え、抵当権で担保されていた債権(被担保債権)を完済していたとしても、この方法をとる場合には、供託をする必要があります。また、「ローンの債権(被担保債権)、その利息及び債務不履行により損害の全額に相当する金銭」を供託する必要があるため、債権額が大きくなると供託する金額も跳ね上がります。そのため、昭和時代の中盤・後半に設定された抵当権の場合は、債権額も大きく、金銭的負担が大きくなります。